今年のコンクールでは課題曲として G1 : “Ne timeas, Maria” (Tomas Luis de Victoria)を演奏します。普段の練習では音楽の質を向上させようと頑張っているんですが、音楽が成立した背景や詞の内容について深く理解しようと調べてみました。
【詞の内容について】
歌詞について調べてみると、ルカによる福音書 1:30-1:32 によるということが分かります。引用元 : Wikisource
御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。
見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。
彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。
ルカによる福音書のこの辺りの情景は『受胎告知』というそうで、Wikipedia ではその内容がさっくりと書かれています。
受胎告知(じゅたいこくち)はキリスト教の聖典である新約聖書に書かれているエピソードの1つ。聖告(せいこく)、童貞聖マリアのお告げ、生神女福音(しょうしんじょふくいん)とも言う。一般に、処女マリアに天使のガブリエルが降り、マリアが聖霊によってイエスを身ごもることを告げ、またマリアがそれを受け入れることを告げる出来事。
淡々と書かれているわけですが、実際にどんな情景だったかと調べてみると、教会ではこのように説かれるようです 。以下、国立のぞみ教会説教要約より。
いわゆる「受胎告知」と呼ばれる場面である。天使ガブリエルは神にマリアのもとに遣わされ、「おめでとう(Rejoice)、恵まれた方。主があなたと共におられる」とあいさつをした。しかし、言うまでもなく、婚約者ヨセフの知らないところで妊娠するということは「喜びの知らせ」というものではなく、悲劇的な告知であり、理解しがたい知らせであった。
こういうモテットはラテン語の歌詞なので、言葉の意味も良く分からず、背景となるキリスト教の物語も知らないので、淡々と歌いがちなのですが、調べてみるとこういったドラマチックな情景なんですね。
【作曲者について】
Tomas Luis de Victoria (トマス・ルイス・デ・ビクトリア)は後期ルネサンス期の作曲家で、やはり Wikipedia で詳しく書かれています。
ビクトリアは対抗改革期のスペインで最も重要な作曲家であり、後期ルネサンス においては最もすぐれた宗教音楽の作曲家である。ビクトリアの作品は20 世紀に復活を遂げ、近年たくさんの録音が制作されている。数多くの評者がビクトリア作品に、神秘的な烈しさと、直接に感情に訴えかけてくる特質を認めている。これらの特徴は、見方によっては、ビクトリアの偉大な同時代のイタリア人、パレストリーナの作品には見当たらない。パレストリーナ作品は、技術的には申し分ないが、情緒的には超然としているからである。
引き合いに出されているパレストリーナがちょっと可哀そうな感じですが、個人的にはどちらの曲も素晴らしいと思います。対抗改革は、ルターによる宗教改革の反動・反省で発生したカトリック教会内での改革で、教義と信仰の見つめ直しを行ったのですが、その辺りもやはり Wikipedia が詳しいので気になる方は調べてみると良いかと思います。